言語化ブームとは?広がった理由と限界

言葉にできないものと、言語化ブームの裏側

言語化とは、考えや気持ち、感覚を言葉にして表すことです。「うまく言語化できない」「それを言語化してくれてうれしい」。そんな言い方が日常にも広がり、言葉にする力が注目されている状況を、ここでは言語化ブームと呼びます。

誰かの感想を読んで、「そう、それが言いたかった」と感じることはないでしょうか。その一方で、心に残ったことをすぐには説明できない時もあります。なぜ言語化が重視されるようになったのかをたどりながら、言葉にできることと、まだ言い表せないことの両方を考えてみましょう。

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「言語化」は、いつから身近な言葉になったのか

「言語化」は、最近生まれた言葉ではありません。三省堂の「今年の新語2024」選評によると、語自体は戦前からあり、心理学や言語学、哲学などの専門分野で使われてきました。

その学術用語が、近年は日常でも使われるようになっています。三省堂が2024年の大賞に「言語化」を選んだのも、この使われ方の変化に注目したからです。

選評には、全国紙4紙での使用が増えたことも記されています。2010年代までは年間10件未満から50件程度でしたが、2020年代には200件以上の年が多くなったそうです。これは新聞での出現件数で、私たちの会話量や言葉を使う能力を測った数字ではありません。

説明する力への期待は、どこから来たのか

同じ選評は、SNSに感じたことを書く時や、就職活動で経験を説明する時などを例に、自分を言葉で表現する必要が高まったとみています。

たとえば、仕事の企画を聞く時には、何をするのか、誰に向けたものなのかを知りたいでしょう。考えていることが言葉になれば、聞く側も気になる点について質問できます。説明する力への期待には、相手の考えを知りたいという願いもありそうです。

でも、まだまとまっていない考えを話すこともあります。途中の言葉にまで、完成した説明と同じ分かりやすさを求めてよいのでしょうか。

言葉にした感想と、その時の経験

ここで、同じ映画を見た二人の感想を、編集部の例として考えてみましょう。一人は音楽が流れ始めた場面を、もう一人は登場人物が黙っている場面を好きだったと話します。同じ作品について話していても、言葉にしているのは、それぞれの印象に残った部分です。

その話を聞いて、音楽の話をしていた人も、登場人物の表情を思い出すかもしれません。「そういえば、寂しそうな顔をしていたね」と応じると、二人の話題は音楽から、その場面での登場人物の気持ちへと移っていきます。

言葉を受け取る人にも目を向ける

聞く側について考える手がかりになるのが、哲学者の永井玲衣さんと書評家のスケザネさんによる2025年の対談です。スケザネさんは、言語化の議論が発信する側に偏っていると指摘しました。永井さんも、話し手へ分かりやすさを求める一方で、聞く側のあり方が問われていないことを問題にしています。

永井さんは対談の続きで、他の人の言葉を理解するには長い時間がかかる場合もあると話しています。一度の説明では分からなかったことを、あとで読み直したり、話の続きを聞いたりして考えることもあるでしょう。

「まだうまく言えないんだけれど」と話し始めた人が、どんなことを伝えようとしているのか、言葉を探す時間も一緒に過ごしながら聞けたらと思います。

言語化ブームと書籍紹介の参考情報
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この記事を書いた人

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