「素直」と「本音」は、どちらも気持ちを隠さずに話す場面で使われます。ただし、二つの言葉が指すものは違います。
「本音」は、本人が本当に思っていることや、本心から出た言葉です。「素直」は、ありのままで飾らず、ひねくれていない様子を表します。
この記事では、素直さと本音の違いを、同じ場面の例文で比べます。正直・率直・建前との違いや、「もっと素直になって」と言われたときの受け取り方も確認していきましょう。
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素直さと本音の違い
まず、辞書に載っている主な意味を並べます。
| 言葉 | 主な意味と使い方 |
|---|---|
| 本音 | 本心から出た言葉や、本人が本当に思っていること。「本音を言う」「本音では反対だ」のように使う。 |
| 素直・素直さ | 飾り気がない、性質や態度が穏やかでひねくれていない、形に癖がないといった状態。「素直に答える」「素直な字」のように使う。 |
本音は名詞です。素直は形容動詞で、「素直さ」は「さ」を付けた名詞にあたります。「素直に本音を話す」という文なら、話す中身が本音で、話すときの態度が素直です。
たとえば、本音では反対なのに、会議では賛成したふりをしたとします。この例では、本音は表に出ていません。一方、相手の指摘を素直に受け止めることと、自分の気持ちを話すことは別です。
例文で使い分ける
同じ会話でも、話の中身に注目するか、話す人の態度に注目するかで言葉が変わります。自然な例と、不自然になりやすい例を比べてみましょう。
| 例文 | 何を表すか | 使い方 |
|---|---|---|
| 本音を言えば、その案には反対です | 本人が実際にどう考えているか | 自然 |
| ミスを認めて素直に謝った | 謝るときの態度 | 自然 |
| 不満だったと素直に本音を話した | 話の中身と話し方の両方 | 自然 |
| 素直を言う | 「話す中身」の意味にはならない | 「本音を言う」に直す |
| 本音な人 | 人の性質を表す形にはならない | 「素直な人」または「本音を言う人」に直す |
「彼は本音を言った」なら、発言の内容が本人の本心だったと分かります。一方、「彼は素直に話した」は、飾ったりひねくれたりせずに話した様子の説明です。両方を伝えたいときは、「彼は本音を素直に話した」と書けます。
本音には意見・希望・意図・感情が含まれる
本音というと感情を思い浮かべやすいものの、意見や希望、行動の意図にも使えます。
- 「本音では、その案に反対です」:意見
- 「本音を言えば、今日は休みたい」:希望
- 「利益を優先したいのが本音だ」:意図
- 「寂しかったのが本音です」:感情
本音と事実も意味が違います。「上司は私を嫌っている」と本人が思っていても、上司の気持ちまでは確定しません。「会議で二度、発言の途中で話を遮られた。意見を聞いてもらえないと感じた」と分けて話すと、起きたことと本人の受け止め方が伝わります。
素直は人の態度以外にも使う
素直は、人の性格や態度のほか、形や技芸にも使う言葉です。辞書には、形にゆがみがないこと、技芸に癖がないこと、物事がすんなり進むことも載っています。
- 素直に謝る:誤りを認め、ひねくれた態度を取らずに謝る
- 助言を素直に聞く:反発せずに受け入れる
- 気持ちを素直に話す:飾らずに話す
- 素直な字:余計な癖がなく、整った字
対人関係では、「飾らずに話す」と「相手に逆らわず従う」の両方の意味で使われます。どちらを指すかは、前後の会話で判断してください。
正直・率直・建前との違い
似た場面で使う言葉も並べると、どこが違うのかを比べやすくなります。
| 言葉 | 中心となる意味 | 例 |
|---|---|---|
| 本音 | 本人の本心や、本心から出た言葉 | 本音では断りたい |
| 素直 | 飾り気がないことや、ひねくれずに受け止める態度 | 指摘を素直に聞く |
| 正直 | 嘘や偽りがないこと | 正直に事情を話す |
| 率直 | 隠したり遠回しにしたりせず、ありのままに示すこと | 率直な意見を伝える |
| 建前 | 表向きの方針や原則 | 建前では賛成だが、本音では迷っている |
「正直に話す」は、嘘をつかずに話すことを強く表します。「率直に話す」は、遠回しな言い方を避けて、はっきり話すことです。「本音と建前」は、内心と表向きの方針を対比するときに使います。
「もっと素直になって」と言われたら意味を確かめる
「もっと素直になって」だけでは、相手が何を求めているのか分かりません。気持ちを話してほしいのか、助言を受け入れてほしいのか、反論せずに従ってほしいのかで、会話の内容が変わるからです。
意味が曖昧なときは、「それは、気持ちを話してほしいということ?」と尋ねてみてください。気持ちを知りたいという返事なら、話せる範囲で答えます。意見への同意を求められているなら、同意できる点とできない点を分けて答えれば、返事の内容がはっきりします。
秘密や個人情報を誰に話すかは、相手との関係と、話した後の安全に関わる問題です。「素直かどうか」とは別の判断です。相手の言う通りにするかどうかまで「素直」の一語でまとめてしまうと、自分が何に同意したのかが分からなくなります。
本音を話す範囲は、会話の目的で決める
自分の本音が分かっても、会話ですべてを話すとは限りません。予定を断るだけなら、結論だけで十分です。関係を改善したい場合は、起きたこと、自分がどう受け止めたか、次からどうしてほしいかまで伝えます。
| 会話の目的 | 伝える内容 | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 誘いを断る | 返事だけ | 今日は会えません |
| 次の予定を決める | 困ったことと希望 | 当日の変更が二回続いて困りました。次は前日までに知らせてください |
| 返事を保留する | 決まっていないことと、返事の期日 | いまは決められません。金曜日までに返事をします |
怒鳴る、脅す、物を壊す、行動を監視するといったことがある関係では、言い方を考える前に安全な場所と相談先を確保します。緊急時は110番へ、配偶者やパートナーからの暴力はDV相談ナビ(#8008)へ相談できます。緊急ではない警察相談には警察相談専用電話(#9110)があります。
伝える内容が決まっても、その場でどう切り出すかは別の問題です。短い言い方の例は次の記事にまとめています。
素直さと本音を使い分ける要点
最後に、二つの言葉の違いを整理します。
- 本音は、本人が本当に思っていることや、本心から出た言葉
- 素直は、飾り気がないことや、ひねくれずに受け止める態度などを表す言葉
- 「素直に本音を話す」では、「本音」が話の中身を、「素直に」が話し方を示す
- 「本音を言う」「素直に話す」は自然だが、「素直を言う」「本音な人」とは言わない
文章を書くときは、「何を思っているか」を示したいなら本音を、「どのような態度や状態か」を示したいなら素直を選ぶと、使い分けやすくなります。
参考情報
言葉の意味と相談先は、次の資料で確認しました。

